2012年 04月 23日
『南部高速道路』 フリオ・コルタサル (木村榮一 訳)-短篇コレクションI |
高速道路の渋滞、ああ、うっとおしい…、くらいの感想しかない。
では、それが数日、いや数週間、数シーズンに渡ったら? 自体はパニック映画さながら
である。
舞台は、フランスのフォンテーヌブローからパリまで続く道。原因不明の渋滞に人々は
いらいらし、前後、そのまた前後の車と暇つぶしがてら、世間話をするようになる。
いつ解消されるのかわからない渋滞に、不安はつのり、水を食糧を交換したり、助け合い
を始め、数台の車をまとめるグループができ、リーダーが生まれる。
縦列する車は、隣り合う家のような存在になる。共同体の誕生である。
共同体を運営していくために、やがて一定の秩序が生まれる。
金を集めて食糧や水を調達し、緊急時に備えて装備のよい車が「救急車」となり、
医者が確保される。
そして、恋が生まれ、命が芽生え、人が死ぬ。
非現実的な状況でも、生活は営まれ、日常となってゆく。
しかし、長かった渋滞が突然終わる日がやってくる。ようやく慣れてきた日常が
また霧散していくラスト。
車種で親しく呼び合っていた仲間たちが、八十キロで飛ばしながら別れ別れに
なってゆくさまは、高速道路を車が走っているだけの見慣れた光景のはずなのに、
なんだか物悲しい。
高速渋滞が、数シーズン続いたら、なんてありえない設定を見事にリアルなもの
にした作者の手腕のたまものである。
生まれては消え、また生まれてゆく共同体。そんな無常の世が描かれている。
↓ こちらに収録されています
短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
では、それが数日、いや数週間、数シーズンに渡ったら? 自体はパニック映画さながら
である。
舞台は、フランスのフォンテーヌブローからパリまで続く道。原因不明の渋滞に人々は
いらいらし、前後、そのまた前後の車と暇つぶしがてら、世間話をするようになる。
いつ解消されるのかわからない渋滞に、不安はつのり、水を食糧を交換したり、助け合い
を始め、数台の車をまとめるグループができ、リーダーが生まれる。
縦列する車は、隣り合う家のような存在になる。共同体の誕生である。
共同体を運営していくために、やがて一定の秩序が生まれる。
金を集めて食糧や水を調達し、緊急時に備えて装備のよい車が「救急車」となり、
医者が確保される。
そして、恋が生まれ、命が芽生え、人が死ぬ。
非現実的な状況でも、生活は営まれ、日常となってゆく。
しかし、長かった渋滞が突然終わる日がやってくる。ようやく慣れてきた日常が
また霧散していくラスト。
車種で親しく呼び合っていた仲間たちが、八十キロで飛ばしながら別れ別れに
なってゆくさまは、高速道路を車が走っているだけの見慣れた光景のはずなのに、
なんだか物悲しい。
高速渋滞が、数シーズン続いたら、なんてありえない設定を見事にリアルなもの
にした作者の手腕のたまものである。
生まれては消え、また生まれてゆく共同体。そんな無常の世が描かれている。
↓ こちらに収録されています
短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
by garacoblog
| 2012-04-23 15:06
| 短篇小説(外国文学)