2012年 08月 31日
『夜の海の旅』 ジョン・バース (志村正雄 訳) -短篇コレクションI |
猫の目から見た人間社会、赤ちゃんから見た日常生活、など
「異化の視点」というのは数多くあれど、意思がないはずのアイツに意思が
あったらどうなるのか?
そんなお茶目な思いつきから生まれた(はずの)物語。
主人公の「ぼく」とその仲間たちは、夜の海を<彼岸>を目指して泳ぎ続けている。
多くの仲間が溺死していく中で、自らが泳ぎ続ける意味を問う。
泳ぎの名手を差し置いて、なぜ自分がまだ泳ぎ続けることができているのか?
<彼岸>とはなにか、それは本当に存在するのか?
「止まるなかれ、考えるなかれ。ひたすらに泳いで沈むのみ・・・・・・」
何百という死体を越えて泳いで行く自分は、しかし、そのおびただしい数の死体を
羨ましくも思う。
その姿勢は真摯で、苦悩に満ちている。泳ぐとは生きるということに等しい。
しかし、この「ぼく」の正体がわかると、くそ真面目につきあっていたのが、途端に
気恥ずかしくなってくる。瞬発力しかない単細胞だと思っていたアイツが、
「ときどきの休み時間に」自分の存在意義を自問自答しているなんて、
ばかばかしさに笑えてくるのだ。
アイツを主人公にしよう、という作者の英断(?)が、ミクロで壮大な物語を産んだ
のだった。
↓ こちらに収録されています
短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
「異化の視点」というのは数多くあれど、意思がないはずのアイツに意思が
あったらどうなるのか?
そんなお茶目な思いつきから生まれた(はずの)物語。
主人公の「ぼく」とその仲間たちは、夜の海を<彼岸>を目指して泳ぎ続けている。
多くの仲間が溺死していく中で、自らが泳ぎ続ける意味を問う。
泳ぎの名手を差し置いて、なぜ自分がまだ泳ぎ続けることができているのか?
<彼岸>とはなにか、それは本当に存在するのか?
「止まるなかれ、考えるなかれ。ひたすらに泳いで沈むのみ・・・・・・」
何百という死体を越えて泳いで行く自分は、しかし、そのおびただしい数の死体を
羨ましくも思う。
その姿勢は真摯で、苦悩に満ちている。泳ぐとは生きるということに等しい。
しかし、この「ぼく」の正体がわかると、くそ真面目につきあっていたのが、途端に
気恥ずかしくなってくる。瞬発力しかない単細胞だと思っていたアイツが、
「ときどきの休み時間に」自分の存在意義を自問自答しているなんて、
ばかばかしさに笑えてくるのだ。
アイツを主人公にしよう、という作者の英断(?)が、ミクロで壮大な物語を産んだ
のだった。
↓ こちらに収録されています
短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
by garacoblog
| 2012-08-31 23:44
| 短篇小説(外国文学)